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学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川) web「連帯」

「学労川崎」第768号 2020年9月3日発行

人事異動基準をめぐり労使交渉 アンケートで寄せられた事務職員の声を届ける

異動基準改善迫るも当局はゼロ回答で決裂

今後の交渉関係は確認 改善に向け引き続き取り組みます
 
 がくろう神奈川川崎支部は8月19日、川崎市教委当局と「人事異動実施要領」に関する労使交渉を持ちました。
「人事異動実施要領」をめぐっては18年8月、市教委当局が学校事務職員の異動対象年数基準を大幅に短縮することを一方的に決定。事務職員に頻繁な異動を強いる労働条件の不利益変更でありながら、以来当局は1年半近くにわたり「異動基準は労働組合との交渉事項ではない」と主張し労使交渉拒否を続けてきました。
 当局の交渉拒否に対し最大組合の川教組は反論ひとつせず、労働組合の基本的役割である労使交渉を放棄し不利益変更を受け入れてしまいました。一方川崎支部は、法令根拠を積み上げ当局の主張の誤りを明らかにすることで当局を追い詰め、今年2月、ついに交渉拒否の誤りを認め今後は誠意をもって交渉に応じる旨、当局に表明させました。
本交渉は川崎支部が、自らの手で勝ち取った労使交渉です。
 

労使交渉で現場の声受け止めさせる

 しかし、交渉の中身は厳しいものとなりました。交渉の席上、当局は次年度の「人事異動実施要領(案)」を提示しましたが、異動基準等の内容はそのまま。川崎支部の申し入れた異動基準年数の改善要求に対してはまったく応じない「ゼロ回答」に終始しました。
 川崎支部は、事務職員が当該職場の環境やニーズに精通することの意義を訴えるとともに、これまで当局が「事務職員にとって不利益ではない」との認識を示してきたことについて、当事者の感覚を受け入れ認識を改めなければ適切な年数基準は導き出せないと指摘。対する当局は、事務職員が不利益を感じていることは受け止めるとしつつ、利益となる面もあり「負担ではあるかもしれないが不利益とはちょっと違う」とも主張。認識のズレは十分には埋まりませんでした。
 川崎支部より、2~3月に実施したアンケート結果も紹介。組合の主張だけでなく回答で寄せられた事務職員の声も届けました。特に仕事に対するプライドや意欲を傷つけられたと受け止めている事務職員が多くいたことを指摘し、当局は年数基準短縮の理由として職場の活性化やスキル向上、人材育成などを言うが、それらは当人のプライドや意欲があってこそではないかと追及しました。当局も「現場の声は受け止め、必要に応じて効果等について検証していく」と回答。これまで届かなかった現場当事者の声を、労使交渉が持たれたことにより当局は初めて受け止めた形となります。
 川崎支部は最後に改めて年数基準の再考を求めましたが、当局は、現行基準になってまだ2回目を終えたばかりだとして当初提案通りでの実施を回答。労使交渉は決裂に終わりました。
 年数基準の改善は勝ち取れませんでしたが、個々の事情に応じた柔軟な運用や必要な配慮については確認。また、今後の交渉関係についても整理・確認しました。これを足がかりに引き続き、川崎支部は基準改善を求め取り組んでいきます。
 

  

事務職員の業務量を顧みない文科省「標準職務例」

 
 文科省が7月17日に出した、事務職員並びに教員の「標準職務例」。前号では2本の通知の関連とその背景を紹介し、事務職員「標準職務例」が教員の標準職務範囲から外れるありとあらゆる業務を事務職員に転嫁するため、事務職員の働き方や仕事のあり方とはまったく無関係に教員の標準職務例通知の付随物として策定されたに過ぎない代物であることを述べました。
 そんな中身のないハリボテではありますが、「学校組織における唯一の総務・財務等に通ずる専門職」とか「学校運営について副校長・教頭とともに校長を補佐する役割を果たすことが期待」といった文科省の唱えるお題目を真に受け浮かれきって、「もっともっと校務運営に参画だぁ!」と怪気炎を挙げるおっちょこちょいが出てこないとも限りません。浮かれるだけならおっちょこちょいで済みますが、得てして「校務運営参画」の中身が単に教員の仕事をもっともっと請け負い、その分本来の業務をおざなりにし、そのうえそういう働き方を「事務の組織化」とか「相互支援」の名のもと周囲の事務職員にまで押し付けようとするものだったりするので、笑ってもいられません。
 うっかり巻き込まれることのないよう、「標準職務例」の中身の中身も見ておきましょう。
「標準職務例」は「校務の中で主として事務職員が担う職務の範囲を示したもの」とされているもので、そこには就学援助・就学奨励事務、転出入・学籍・諸証明発行事務、教科書給与事務調査統計事務、文書・校内諸規定制定事務、給与・手当・旅費・任免・服務・福利厚生事務、予算・契約・決算・学校徴収金・補助金・委託料・監査事務、施設・設備・教具整備維持管理事務・備品整備、事務全般に係る提案・助言・統括・企画・運営、共同学校事務室運営・事務職員人材育成といったものが盛り込まれています。膨大です。
 このうちアンダーラインを引いたのは、川崎市の学校事務職員「標準的職務内容」には含まれない業務です。今現在の業務量を振り返り、併せて内部統制制度の導入を受け財務事務を中心に業者選定や事務執行の厳格化も進む中、さらに上記アンダーライン該当業務を担う余裕のある事務職員は、果たしてどれだけいるでしょうか。
 また文科省通知では、中教審答申においては「学校以外が担うべき業務」「地方公共団体が担っていくべき」とされているはずの学校徴収金(徴収・管理)について、「仮に、学校が担わざるを得ない場合」をあらかじめ想定して「標準職務例」に敢えて盛り込んでいます。「学校が担わざるを得ない場合は事務職員に」という考え方は中教審答申でも示されていましたが、文科省が初めから「標準職務例」に盛り込めばその意味は違ってきます。「学校以外が担うべき業務」だが学校事務職員の標準職務だ、という文科省の破綻した論理は、徴収金業務を学校内に残存させるだけでしょう。
 こうした論理が通用し現場で受容されれば話は徴収金にとどまりません。教員の業務範囲から外れつつ地方公共団体も手を差し伸べない広大な業務範囲を、ひとり事務職員のみに負わせる論理になります。行きつく先は殺人的業務量です。
 一方で文科省は、通知の中でくどくどと「職務内容を定めるための基礎資料」「各学校・地域の実情等についても十分に考慮されるよう」「具体的な職務内容を定める際には(中略)学校規模,教諭等の配置数や経験年数,各学校・地域の実情等についても十分に考慮されるよう」とも並べ立てています。文科省の無責任ぶりとも言えますが、同時に文科省通知を根拠にあの膨大な業務負担が機械的に現場に適用されたり、私たちが応じなければいけないものではないということです。
 事務職員の働き方や業務量に対してはなんら検証・検討を行うことなく、教員や管理職側の働き方(改革)の視点のみに基づいて策定された事務職員「標準職務例」。これは事務職員が現に担っている業務に対する侮辱でもあります。まともな事務職員はこんなものに惑わされません。
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