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学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川) web「連帯」

「学労川崎」799号(2023年8月9日発行)

市教委当局 「学校事務職員の在り方検討」開始へ

狙いは「職務・役割分担の見直し」「管理職を含む教員の負担軽減」「集約化」

検討内容は「標準的職務内容の見直し」「職員室→事務室の業務移管」

      「集約組織」「事務局業務の移管」「人事配置のあり方」……

危惧される業務増と共同学校事務室

学労川崎は何よりもすべての学校事務職員が安心して

働き続けられる労働環境を守る立場で対応していきます

 

「働き方・仕事の進め方改革」に関して申入書提出

 川崎市教委は22年3月に「第2次教職員の働き方・仕事の進め方改革の方針」を策定。この中には、「学校事務職員の能力活用」が「具体的な取組」として盛り込まれています(本紙784号詳報)。
「適切な業務連携・役割分担の検討」「効率的・効果的な執行体制の検討」を謳うこれに対し、学労川崎は学校事務職員への業務転嫁=業務増と共同実施・共同学校事務室(※説明後述)導入につながりかねないと見て強く警戒。22年5月に説明を受けた(本紙786号詳報)ほか折に触れて進捗状況を確認するなどしてきました。
 さらに、「2次方針」は他の施策ともども25年度までを取組期間としており、それを前提とすればこの具体化は近いものと考え、7/26には<「第2次教職員の働き方・仕事の進め方改革の方針」ならびに「学校事務職員の能力活用」「学校事務職員の業務の在り方」に関する申入書>(同封付録)を提出。学校事務職員の労働条件・労働環境を守る立場から見た懸念と見解を、当局に提示しました。
 
(※)「共同実施・共同学校事務室」=特定の学校に複数の事務職員を集中的に配置して事務業務を共同処理すること。学校事務部門集約によるセンター化と人員削減、非正規雇用化、外部委託化、ひいては学校事務職の廃職=雇用破壊につながるものであり、学労は強く反対している。
 

当局 「庁内検討会議」設置へ

 そうした中、申入書の提出とほぼ同時となる7/31、市教委当局は<学校事務職員の在り方検討について>と題した資料を学労川崎へ提示、内容説明がありました。
 当局はまず、1998年までさかのぼりとりわけ2015年の「チーム学校」中教審答申以後の学校現場における業務改善や働き方改革、その中での学校事務職員の職務規定等をめぐる国の動向を紹介。特に20年7月に文科省が出した<事務職員の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について>通知(本紙767~9号詳報)をもとに、川崎市の既存標準的職務通知との比較の中で検討の必要があるとの認識を表明。それらを踏まえ、次の6つの「効果」を目して大きく5つの「検討事項」を取り扱う「庁内検討会議」を設置するとしました。

「検討後の取組による6つの効果」
▽学校間の事務の標準化・平準化
▽学校事務職の職務・役割分担の見直し
▽学校管理職を含む教員の負担軽減と時間外在校等時間の縮減
▽校務処理の組織力の強化
▽集約化による事務処理の更なる効率化・質の向上
▽人材育成の強化
「検討事項」(※各々に「検討内容」も記載あり)
▽学校事務職や教員の教務に係る職務内容の分析
▽学校事務職の業務の定量的な分析
▽集約化する場合の体制や業務の移管のあり方の検討
▽人材育成のあり方の検討
▽H31.1.25中教審への対応

「検討事項」ごとに示された「検討内容」では、「標準的職務内容の見直し」「業務移管のあり方(職員室→事務室、事務室→集約組織)」「集約組織の規模」「集約組織の決裁権限付与の有無・範囲」「事務局業務の移管(3層化)の可能性」「人事配置のあり方(昇任制度、一般事務職との関係性の整理)」といった文言が踊ります。
 これらが実際に行われるか否かや具体的な中身はこれから検討されることですが、その先行き次第ではこれまでにない格段の業務増や、「集約組織」=共同学校事務室導入ないしセンター化とそこでの管理強化といった、労働条件・労働環境悪化が危惧されます。
 

「検討会議」事務職員参加は事務研と相互支援から

「庁内検討会議」の構成についても説明がありました。
 教委事務局からは教育政策、学事、教職員企画、教職員人事、給与厚生。学校現場からは校長会と教頭会よりそれぞれ3人、それに学校事務研究会の学校事務職会員3人と学校業務相互支援事業相互支援組織の地区代表者・グループリーダー3人。後ろの6人が学校事務職員からの参加となります。
 事務研は他ならぬ当局が19年に「事務職員に自主研究・研修権はない」として勤務時間内活動を認めなくなり、加入率も大きく低下しています。会員の意見を吸い上げ組織運営を行う基盤であった月1回の地区研と常任委員会も消滅しており、事務職員を代表して何らかを述べる立場にはありません。
 相互支援の代表者・グループリーダーに至っては、市教委が実施する事業において市教委の指定を受けてその地位にある人物です。個別の人格や信条は別として、そうした地位に基づき参加する会議において、当局の示す方向性に異を唱えたり学校事務職員の立場を強く主張できるとは考えられません。
 

学校事務職員のための組合に今こそ

「庁内検討会議」は私たち学労川崎も傍聴参加することとなっており、また労働条件に関わる変更が生じうる場合には当然ながら組合への提案と労使交渉がもたれる事を確認しています。
 この先約2年は、川崎の学校事務職員にとって大きな山場となります。学労川崎は7/26申入書でも強調したように、「心身ともに安心して生き生きと健全な環境のもと働き続けられる労働条件・労働環境をこそ求めます」。これからも学校事務職員として安心して働き続けたいと願う方々、今こそ学労川崎にご加入を。
 

 

学校事務職員の欠員未補充 組合員校も含む2校で解消

 
 今年度、4月時点から菅生小・南加瀬中・聾学校の3校で学校事務職員の欠員未補充が生じていた問題(前号既報)。学労川崎は当該校現職者の労働環境はもちろん、定数の空洞化は職全体の労働環境と雇用を危うくするものであると捉え、市教委並びに組合員校である聾学校校長との間で労使交渉を持ち、速やかな欠員解消を求めて取り組んできました。
 この結果8月までに、南加瀬中と聾学校では臨時的任用職員の配置が行われ欠員が解消しました。ただ、残る菅生小(川教組事務職員部長校)は会計年度任用職員の配置にとどまり欠員状態のままです。
 今後年度途中においても休業や休職等で、代替職員の配置が求められる場面はあるでしょう。交渉の中で、未任用の臨任登録者は70人もいることがわかっています。当たり前の定数配置が崩れた先に、人員削減と業務負担増があり、共同学校事務室・学校事務のセンター化・任用一本化といった人員削減合理化・廃職の道があります。学労川崎は理由なき欠員未補充を許さず、定数の適正配置に取り組んでいきます。
 

 

【学労川崎799号付録】2023年7月26日付 学労川崎発 川崎市教育長宛 申入書

  

「第2次教職員の働き方・仕事の進め方改革の方針」ならびに

「学校事務職員の能力活用」「学校事務職員の業務の在り方」に関する

申 入 書


 私たち学校事務職員労働組合神奈川は学校事務職員の労働条件改善に向け、様々な取り組みを進めています。
 2022年3月に出された「第2次教職員の働き方・仕事の進め方改革の方針」(以下「2次方針」)には、「学校事務職員の能力活用」が「具体的な取組」として盛り込まれています。25年度までとする「2次方針」の取組期間を前提とすれば、これの具体化が間近に迫っているとの認識を持っています。また実際に23年4月6日の労使交渉の席上、教職員企画課長より「25年度までに学校事務職員の業務の在り方を検討する取り組みが予定されており、今年度から検討を始める」旨が表明されたところです。
 このことに対して、私たちの懸念と見解を以下お示しいたします。
 懸念は大きく「教員から学校事務職員への業務転嫁」と「共同実施ないし共同学校事務室の導入」にあります。
 私たちは学校事務職員の労働条件・労働環境を守る労働組合として、基本的に学校事務職員への業務転嫁を容認することはできません。ましてそれが、総体的に見て学校事務職員に業務増・労働強化・労働条件悪化をもたらす蓋然性が高いものであれば、なおさらです。
 また共同実施・共同学校事務室は、学校事務職員間に無用な階層化を生み出すほか、事務部門集約によるセンター化と人員削減・非正規雇用転換、さらには外部委託化・民営化、ひいて廃職といった合理化を招くものであり、私たちは一貫して反対し貴職にもその旨を申し入れてきました。
 根本的に私たちは、労働者として、そして生活者・市民として、心身ともに安心して生き生きと健全な環境のもと働き続けられる労働条件・労働環境をこそ求めます。このことはとりわけ、川崎市ならびに社会全体の平和で民主的な形成をなす人格の完成に向け、児童・生徒が様々なものを見聞きし学び育まれる場である公立学校にあって、そこで働くすべての者に対して当然に保障されるべきものであると信じます。
 この点、「2次方針」に示された「活用」といったモノを扱うかのような表現を肯定的に受け入れることはできませんし、今後具体化される施策が「誰のため」のものか、厳格に見極める考えです。
 標記の件をめぐっては、本申入書に示す内容を十分に踏まえるとともに、具体化における交渉・協議・その他取扱いの場にあってもこの内容を共通認識として共有したうえでの真摯な対応を強く申し入れます。
 
 
1.学校事務職員の「能力活用」や「業務の在り方」を検討することと、共同実施・共同学校事務室は直結しないこと。
・共同実施・共同学校事務室は「手段」に過ぎない。先に立つべきは「理念」でありその具体化である「目標」ないし「目的」である。共同実施・共同学校事務室という「手段ありき」の検討・議論であってはならない。
・目標/目的に向けて、共同実施・共同学校事務室という手段が真にプラスであるのか、プラスであるとすればどうプラスなのか、マイナスはないのか、マイナスがあるとすればどうマイナスなのか、プラス効果とマイナス効果の比較衡量はどうか。政策立案にあたってはそうした検討がなされなければならない。また、この検討は科学的根拠に立ったものでなければならない。
・共同実施・共同学校事務室を導入する場合、それが「誰のため」であるのかを明確にすべきである。この際、学校事務職員は重要なステークホルダーであり、学校や教育委員会の都合のみが優先されそこで働く者の意思が軽んじられることがあってはならない。
 
2.学校事務職員の「学校間における職務内容の標準化」「業務連携・役割分担の検討」は業務負担に直結するものであり、それにあたっては学校事務職員の業務負担に対する考察が不可欠であること。
・学校事務職員の勤務実態については半世紀以上全国規模の調査は行われておらず、国はこれに関する知見を持っていない。「チーム学校」や「学校における働き方改革」の検討・審議・答申においても、学校事務職員の勤務実態や業務負担に関する知見を踏まえた議論は皆無に等しい。これら答申を受けた文科省の政策・通知もまた同様である。
・「2次方針」における「本市教職員の勤務状況や負担感」に係る「現状の考察」も、教員の勤務実態に対する言及のみであり、学校事務職員の勤務実態・業務負担は劣位に置かれている。
・一方で川崎市の学校事務職員の年間時間外勤務については、22年度、平均で90時間超・最長で586時間超という実態が明らかになっている。
・元来、時間外勤務は例外的なものであり、これが恒常化しているのであれば業務を減らすか人員を増やすことが使用者の責任である。よしんば同事業場の他の職種にそれを上回る長時間労働の実態があるとしても、すでに時間外勤務が発生している職種に対して一層の業務転嫁を図ることは根本的に誤りである。残業前提の「学校間における職務内容の標準化」「業務連携・役割分担」であってはならない。
・なお、文科省の調査によれば、業務負担との関連性が指摘される精神疾患による休職について、教員より学校事務職員の方が職種全体に占める割合が高く、かつその差は14年度以降最新の21年度に至るまで拡大し続けている。付言すれば、14年度はいわゆる「チーム学校」が文科相より中教審に諮問された年である。
 
3.学校事務職員の「学校間における職務内容の標準化」「業務連携・役割分担の検討」は、業務の「量」や「負担」の標準化・平準化を意味せず、むしろ学校事務職員間においてその差を拡大させる可能性があること。
・学校事務職員の「学校間における職務内容の標準化」が、もし“いずれの学校においても学校事務職員は同じ職務を担当する”という意味であるとすれば、学校間の差異に応じて当然に存在する個々の業務の量や負担の多寡と事務職員配置数を踏まえた校務分掌の調整が否定されることとなり、結果、学校事務職員間の業務量・負担の差を拡大させる。
・一般に、学校規模の大小に比例して学校事務職員の業務量は変動する。小学校で12学級と26学級、あるいは27学級と40学級とでは、配置される学校事務職員は同数であるところ、両校の学校事務職員がいずれも同じ職務を担当した場合、それは業務量の標準化・平準化になるか。業務負担は同じといえるか。26学級1人配置と27学級2人配置とではどうか。
・学校規模の他、地域特性や施設・備品の老朽化状況、在籍教職員の傾向、夢教育21推進事業等への取り組み状況といった要素も、学校事務職員の業務量・負担の多寡に影響する。職務ごとの件数は学校規模に比例するとも限らない形で、学校間に差が存在する。
・20年7月17日付文科省通知(2初初企第15号)はこうした実態を踏まえ、「事務職員等の標準的な職務の明確化を図る際には,各学校・地域の実情等についても十分に考慮されるよう」「事務職員の具体的な職務内容を定める際には(中略)学校規模,教諭等の配置数や経験年数,各学校・地域の事情等についても十分に考慮されるよう」と明記している。
 
4.学校事務職員の「学校間における職務内容の標準化」は、他の職場・職種ではなされている個々の職員の事情に応じた配慮を、学校事務職についてのみ否定するものである可能性があること。
・学校事務職員の「学校間における職務内容の標準化」が、もし“いずれの学校事務職員も同じ職務を担当する”という意味であるとすれば、まだ中心的職務の遂行にも不慣れで時間を要する1年目2年目の職員にも、20年目30年の職員と同じ量・質の職務遂行を要求することを意味する。そうした職場・職種を、少なくとも公務職場において管見の限りでは知らない。
・学校職場でも、教員に対しては経験の長短やそれぞれが抱える育児や介護や病気等の事情、得意不得意や信条をも踏まえた、校務分掌上の配慮がなされている。事情や特性に応じて、学級担任を持たせない、分掌主任に就けない、比較的軽い分掌に就ける、といった配慮も行われているし、誰もがすべての学年・すべての分掌を経験するわけでもない。
・もし、学校事務職員に対してのみ「個々の事情や特性に関わらず誰でも同じ職務を担当せよ」という趣旨であるとすれば、それは過剰・不当な要求と言わざるを得ない。前項で触れた20年7月17日付文科省通知にも反するものである。
 
以上


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