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学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川) web「連帯」

「学労川崎」第780号 2021年10月15日発行

人事委員会勧告 ボーナス引下げめぐり初めて「期末手当から差し引く」旨明記

≪引上げは勤勉手当・引下げは期末手当≫では賃金格差が拡大・強化される  

 

人事評価による賃金格差の拡大・強化

 10月5日、市人事委員会による給与勧告が出されました。月例給こそ据え置きとなったものの、ボーナス=期末・勤勉手当を0.15月引下げて4.3月へ、と勧告。昨年の0.05月引下げに続き2年連続、しかも大幅なマイナス勧告となりました。
 コロナ禍は病院・保健関係部署を筆頭に、学校現場も含め全庁的に労働強度を高めています。そうした中での賃下げはただでさえ納得できるものではありません。
 しかしそれにも増して容認できないことは、このボーナス引下げをめぐり、勤勉手当ではなく「期末手当から差し引く」と明記したことです。川崎市の人事委員会はこれまで、ボーナスの引上げ・引下げに際して期末手当と勤勉手当のいずれに配分するかは勧告で触れることはせず、労使交渉に委ねてきました。それを転換した形です。
 ともあれ、期末手当からの差し引きは大問題です。17年度に行われた教職員給与費の市費移管以降、ボーナスの改定は≪引上げるときは勤勉手当に、引下げるときは期末手当から≫とされ続けてきています。ボーナスに占める割合で言えば、勤務期間に応じて平等に配分される期末手当が下がり続け、不透明・恣意性・偏見・運…等々が入り混じる人事評価の成績によって上下する勤勉手当が上がり続けているということです。問題だらけの人事評価による賃金格差を拡大・強化するものであり、絶対に容認できません。
 引下げ勧告の要因となったのは民間給与実態を受けたものですが、その低下の要因は新型コロナ禍による経済活動の停滞・縮小とみて間違いないでしょう。よしんばそうした痛みを分かち合うことが必要だとするならば、なおのこと賃金格差を拡大・強化するのではなく、皆が等しく受けられる賃金を保証していくべきです。
  

引下げが会計年度任用職員に及ぶ不条理

 併せて指摘しておきたいのが、会計年度任用職員への影響です。期末手当引下げを、会計年度任用職員にまでそのまま適用するのはあまりにも不条理。そういう経過があります。
 会計年度任用職員の制度は地公法改正施行を受け、2020年度から始まりました。この制度により期末手当の支給が法的に可能となる一方、勤勉手当の支給からは引き続き除外されました。
 前年の19年度、制度設計に当たって川崎市当局は、それまで月額非常勤として勤務し会計年度任用職員制度移行後は新たに期末手当の支給対象となる職種について、期末手当を含む年収ベースで見て制度以降前後で微増となるよう、移行後の月例給を算出。その月例給額に対応する給与号を初任給相当号に位置付けました。
 会計年度任用職員制度では本来、根拠が不明確だった時給・日給・月給について、職種ごとに職務内容等を踏まえて初任給相当号を決定し、時給・日給・月給もそれを算出根拠に支給すること、とされていました。しかし川崎市当局の決定方法は、職務内容とは無関係に従来の年収から逆算して初任給相当号を導き出すやり方でした。背景には、期末手当を支給することとなっても人件費の上昇を抑える意図がありました。
 これにより月例給はむしろ下がることとなりましたが、当時年間2.6月の期末手当を前提として、それを含めれば年収では微増となるから良いだろう、という論理で制度移行が行われたのです。
 しかし、昨年の期末手当0.05月引下げは会計年度任用職員にも適用。さらに今回の人事委員会勧告が実施されれば、会計年度任用職員については制度設計時に想定された期末手当2.6月が、実際には施行2年目にして2.4月にまで減ることとなります。フルタイム職員の期末・勤勉手当4.5月→4.3月と比較して、比率としては遥かに大きなものです。その上、そもそも期末手当2.6月を前提に月例給は引下げ済。これはあまりに不条理です。
 さらに、今後もボーナスについて≪引上げは勤勉手当、引下げは期末手当≫が続けば、勤勉手当の支給されない会計年度任用職員のボーナスは、「下がりこそすれ上がることはない」こととなります。同一労働同一賃金や「非正規雇用」労働者の労働条件改善が叫ばれる社会にあって、これに逆行して「正規」と「非正規」の賃金格差を広げるものです。
 会計年度任用職員制度をめぐっては、制度設計を誤ったと言わざるを得ません。是正が急務です。 
 

 

市費移管に伴う賃金不利益 「相当程度に及ぶ」と横浜地裁が認定

採用年次による賃金不利益に道理なし!直ちに是正を!  

 
 川崎市立学校事務職員2人が、賃金上の不利益是正を求めた措置要求を市人事委員会が棄却したことに対し、棄却判定取り消しを求めた訴訟の判決が9/27にありました。横浜地裁は原告学校事務職員の訴えを認め、人事委員会の判定を取り消す判決を下しました。人事委員会は10/6、控訴しない旨を発表。判決は確定しました
 そもそもこの「賃金上の不利益」は、2017年度に行われた教職員給与費の市費移管に端を発します。移管に際して学校事務職員の適用給料表は、神奈川県学校行政職給料表から川崎市行政職(1)給料表に移行させられました。この時私たちがくろう神奈川川崎支部は、川崎市においても学校行政職給料表を設けるよう要求しましたが、市教委当局は応じず決裂した経過があります。
 そして、異なる給料表に移行させられ級構成や号給間差額が変わるとともに、本来あったはずの昇格機会も失われた結果、10年度採用者を筆頭にそれ以降市費移管前までの特定の採用年次について、他の採用年次と比較して賃金上の不利益が生じることとなりました。この不利益は試算によれば号給にして10号(昇給2年半相当)に及ぶ場合もあり、しかもその不利益差は退職まで数十年の給与・ボーナス、さらに退職金にまで影響する甚大なものです。
 当然ながら、採用年次が原因で賃金上の不利益が生じることなどあってはなりません。こうした問題を生み出したのは第一に、市費移管にあたっての市教委当局の判断の誤り・不作為と言うほかありません。加えて人事委員会も判定において、法解釈を誤りあるいは是正要求の判断対象を誤り、実体的な判断を怠ったものです。
 横浜地裁判決は、人事委員会の判定について適法な手続により判定を受ける権利を侵害しており違法、とするのみならず、賃金上の不利益についても「不利益・不均衡が生じているものと認められる」「相当程度に及ぶもの」と認定しました。重大な司法判断です。
 川崎支部はこの問題をめぐり、原告らとは異なるアプローチで改善を目指してきました。同時に、原告らと連絡・情報交換を行い訴訟に対しては傍聴に赴くなど、協力的な立場から注視してきました。判決を受け、9/30には川崎支部として、人事委員会に対し「控訴しないよう求める要請書」も提出しました。
 賃金上の不利益をめぐる横浜地裁の判断は、訴訟原告のみならず少なからぬ学校事務職員についても、賃金上相当程度の不利益・不均衡が生じていることを認めるものです。そうした不利益は直ちに是正されるべきです。
 原告2人の取り組みに敬意を表するとともに、川崎支部としては判決確定を踏まえ、今後市教委当局に対して是正を求めていきます。
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