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14年度地教委要請書

15年1月に神奈川県内の全市町村教育委員会に提出した要請書です。






学校事務職員課題に関する要請書
 
 日頃より、学校事務職員の労働条件改善及び義務教育諸学校の教育条件整備にご尽力いただいていることに感謝申し上げます。私たちは、神奈川県内の義務教育諸学校に働く学校事務職員で作る労働組合です。学校事務職員の労働条件を維持改善するとともに、学校ならびに行政の民主化を推し進めるための活動に取り組んでいます。
 貴職におかれては以下の要請内容にご理解をいただき、諸課題解決に向けた取り組みや、関係方面への働きかけを行ってくださいますよう、要請いたします。
 
 
1.教育に地域間格差をもたらす、給与費・人事権等の県から市町村への「権限移譲」に反対すること。
 昨年5月に国会で成立した通称「第4次一括法」において、現在都道府県が負担している義務教育諸学校教職員給与費のうち、政令指定都市の教職員について給与負担を政令市に移管することが決定されました。私たちは従来よりこの教職員給与費の政令市費化について、教育に地域間格差をもたらすものであるとして反対してきました。
 現行の「県費負担教職員制度」は、市町村の財政力の強弱により教職員の給与水準や定数に格差が生じることを防ぎ、教育の機会均等を保障するためのものとしてありますが、政令市費化をはじめ市町村への「権限委譲」はその制度を崩すものとなります。特に給与費の移譲では、各市町村の財政力が教育に直接影響してきます。現在準備が進められている政令市においても、予定されている税源移譲分だけでは給与費をまかないきれないとされており、また政令市間の不足額の差も顕著です。
 こうした実態は、賃金・労働条件や定数にも影響を及ぼします。財政力の弱い自治体は教職員給与の引き下げや定数減に、いやおうなしに踏み切らざるをえなくなるでしょう。加えて、学校業務の外注化・非正規雇用への転換なども加速させ、教育の機会均等よりも財政事情が優先される「安上がりの教育行政」「教育の民営化」と言うべき状況を招きかねません。この中で少数職種である学校事務職員については、一般行政職との任用一本化や定数の大幅削減、センター化、外注化・非常勤化といった、学校事務職員制度の解体が強く懸念されます。こうしたことはひいて、教育全体に影響するものと考えます。
 政令市に次いで、中核市やその他市町村への人事権を含めた移譲についても、論議がされています。しかし、こうした「権限移譲」は「地方分権」の美名とは裏腹に、地域間格差をよりいっそう拡大・全体化していくものに他なりません。貴職におかれても反対の立場から働きかけを要請します。
 
2.学校事務職員を学校から引き剥がし、人員削減や廃職につながる「学校事務の共同実施」を実施しないこと。また、「共同実施」を目的とした定数加配を申請しないこと。
「学校事務の共同実施」は数校の学校事務職員を定期的に1ヶ所に集め、事務の共同処理を進めるものですが、学校現場を離れることで校内業務への対応の遅れや個人情報の校外持ち出しが生じるなど、事務職員・勤務校双方の業務に支障が出ます。また、「共同実施」は学校事務合理化の施策の面が強く、「共同実施」推進の先には義務教育費国庫負担制度からの事務職員はずしや事務センター化、人員削減、そして廃職まで想定されます。
 こうした想定は現実に、「共同実施」先行県において非正規雇用事務職員の増大が顕著であることや、明確に人員削減を目的に掲げ導入を進めようとしている自治体まであることからも、明らかです。これらは学校事務職員の労働条件と雇用を破壊するとともに、学校運営にも不安定・不均衡をもたらすもので、私たちとしては到底受け入れられるものではありません。
 あわせて、2001年以来事務職員定数加配として「きめ細かな学習指導や教育の情報化の支援等のため事務部門の強化対応を行う学校への加配」が設けられていますが、その内容は「共同実施」の推進を目的としています。加配方式のため毎年受けられる安定したものとはならず、定数改善とは無縁です。
 学校運営と学校事務職員制度の安定化のため、「共同実施」とそれにつながる施策をとりやめるよう要請します。
 
3.非正規雇用職員の労働条件を改善すること。
 神奈川県内の公立義務制学校では、臨時的任用や非常勤といった非正規雇用職員が多数働いています。学校において臨時的任用職員の職務は正規職員となんら変わらず、事務職員の単数配置、教員の学級担任も珍しくありません。非常勤職員も学校運営に不可欠で、特に事務職員は定数内職員に該当することも多くあります。にもかかわらず、あらゆる労働条件について著しく低く抑えられています。
 臨時的任用事務職員の賃金は何年働いても、学校行政職給料表1級37号で頭打ちとされています。これは大学卒程度採用正規職員が3年目に到達する号を下回る水準で、全国的にも著しい低賃金です。
 休暇制度を見ると、正規なら有給なのに非正規雇用だと無給であったり、期間等が制限されているものがいくつも見られます。臨時的任用職員の一部を例に取ると、私傷病の療養休暇は正規が有給で90日のところ、無給で10日だけ。妊娠・出産・育児に関する休暇は、育児参加休暇と子の看護休暇を除き全て無給とされている上に、対象や期間、時間も正規より制限・短縮されています。
 私たちの長年の改善要望に対し県教委は、「全庁的な問題なので難しい」などとしていますが、全庁の中でも特に多くの臨時的任用職員を抱える県教委が動かなければ、問題は解決しません。社会的な批判の高まりの中で、総務省は昨年7月に臨時職員の任用適正化を求める通知を発しました。貴職からも改善を働きかけるとともに、貴職の裁量により改善できる手立てがあれば実施するよう要請します。
 
4.義務標準法に定める学校事務職員定数を遵守し、欠員を生じさせないこと。また、学級数等客観的基準に基づき、複数配置基準を改善し定数増をはかること。
 学校事務職員の定数は義務標準法(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)により定められています。この法律は教職員配置の適正化と義務教育水準の維持向上を目的としており、これに基づく職員定数は、全国的な教育の機会均等を保障するためのものとして、自治体の財政的事情や政策にかかわらず当然に遵守されるべきものです。
 しかし、神奈川県における義務教育諸学校教職員の欠員は今年度も2,000人を大きく上回り、このうち事務職員は220人にのぼります。欠員は臨時的任用職員によって埋められていますが、不安定な雇用と低待遇に抑えられた非正規労働者を多用することで成り立つ「教育」には、いびつさを感じます。欠員の常態化は人員削減にもつながりうるものです。希望する臨時的任用職員を正規採用に転換するなどの方法で、大量欠員の解消に向け県に対し働きかけていただくよう要請します。
 また、現在の学校事務職員複数配置基準は小学校27、中学校21学級以上となっています。しかし学校現場の事務量は増大の一途をたどり、特に複数配置にわずかに達しない学校でひとり働く事務職員の多くが、重い負担を強いられています。複数配置等定数増は、一定の線引きをせざるを得ないにしてもそれは必要十分かつ合理的であるべきです。まして先述した「共同実施」加配のような、客観的基準に基づかない職員配置は定数改善と見ることはできません。「客観的基準に基づく定数増」という、真の定数改善に向けた取り組みを要請いたします。
 
以上














 
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