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「連帯」No.319(2025年9月29日)

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文科省「学校と教師の業務の3分類」で事務職員にさらなる業務転嫁

全学労連は抗議声明 「業務増反対」の声を皆で挙げよう


広報・web・ICT・ネットワーク管理まで?!

 8月19日、中教審初等中等教育分科会「教師を取り巻く環境整備特別部会」で、教員の業務量管理や健康確保に関する「指針」の改正案が示された。あわせて、従来の「学校・教師が担う業務に係る3分類」について「学校と教師の業務の3分類」と名称を改め、分類ごとの業務を見直す案も明らかになった。
 しかしその内容は、教員の負担軽減のために学校事務職員へのさらなる業務転嫁を盛り込むものであった。
「指針」案は「事務職員、支援スタッフ等と分担し『協働』していくことへのシフトチェンジが重要」としたうえで、20年に文科省が発出した事務職員標準職務参考例通知への「留意」を促し、さらに「共同学校事務室の設置、研修の実施」に努めるよう述べる。そして「3分類」案では新たに、「学校の広報資料・ウェブサイトの作成・管理」「ICT機器・ネットワーク設備の日常的な保守・管理」について「事務職員等を中心に実施」と明記した。
 20年の標準職務参考例通知は、直接的な教育活動以外のありとあらゆる業務を学校事務職員に転嫁する内容だ。実際に以来5年間で事務職員の業務負担は深刻化し、精神疾患による休職も増加している。「参考例」に過ぎないはずの通知により膨大な業務量を課したうえ、共同学校事務室を設置すればそれに対応できるかのような非科学的な幻想がふりまかれている。しかし文科省は23年12月には、共同学校事務室自体が業務負担増を招く可能性を認めている。
 

職員適正配置・定数改善・業務縮減を

 こうした問題を受け、がくろう神奈川も参加する全国の学校事務労組の連合団体・全学労連は8月26日、抗議声明を発出。文科省にも緊急申し入れを行った。下記3点を柱として強い危機感を表明するとともに、学校内での業務転嫁ではなく職員適正配置・定数改善・業務縮減を訴えた。

・「標準職務参考例通知」を理由とした学校事務職員への業務転嫁は、通知の趣旨に反すること。
・「共同学校事務室」は業務増を補うものではなく、むしろ一層の負担を招くこと。
・学校事務職員の欠員不補充をそのままに、さらなる業務押し付けは許されないこと。 

 声明は「教育新聞」で報道されたほか、学校事務職員の業務負担に対する懸念は、文部科学大臣会見でも取り上げられた。SNS上でも事務職員の間で、さらなる業務転嫁への憤りの声が目立った。
 一方でそれに水を差したのが事務研究会の全国組織・全事研だ。9月3日に「3分類」案への「賛同」を発表。「事務職員への期待に応えるために」などと述べ立て、一層の過重労働を自ら追い求めそれを「期待」と歪曲する倒錯した立場をあらわにした。 
 

「期待」より「良好な労働環境」を目指そう

 結局、文科省は9月26日に新たな「指針」と「3分類」を通知。若干の問題意識の受け止めからか、「指針」には「事務職員の負担が過重なものとならないよう」との文言が挿入され、「3分類」の広報資料・ウェブサイトについて「中心に実施」から「積極的に参画」に表現が緩和された。
 ただ、新たな負担をかけながらそれが「過重なものとならないよう」にはしろ、というのは矛盾だ。何より過重業務の現実はすでにあり、それを示すように、学校事務職員の精神疾患による休職は1.12%、1か月以上の病休も含めると1.85%にものぼっている。
 私たち学校事務職員は、「期待」「参画」「活躍」といった言葉に惑わされることなく、もっと声を大にして言っていい。「業務増反対!」と。私たちがくろう神奈川とともに。
 
全学労連の声明「全学労連」ホームページよりご覧ください
 

 

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川崎で学校事務大改悪の動き がくろう神奈川は強い反対を表明

上意下達の階層化と膨大な業務増を狙う

 
 川崎市教委は7月11日、「学校事務職員の在り方に関する今後の方向性(案)」と、今年9月からのその「モデル事業」実施を公表した。
「方向性(案)」は、「執行体制」と「標準的職務内容」の見直しを柱としている。校務運営への「参画」「活躍」、あるいは事務の「標準化」「平準化」といった言葉で装飾されているがその中身は、係長・課長補佐を上位とする学校事務職員のグループをつくり階層化・上意下達の体制を設けること、その体制のもと学校事務職員の業務を増やすこと、の2点に尽きる。
 がくろう神奈川川崎支部は一貫して、業務増と学校事務職員間の階層化に反対。その立場は市教委にも繰り返し申し入れてきた。このため今回の「方向性(案)」に対してもただちに、強い反対と厳しい対処の意を市教委に対し表明した。
 グループ化は、2中学校区で編成しグループ内の全校に兼務発令を実施。係長・課長補佐を「上司」的に位置づけ、業務増を伴う助言や業務進捗管理、研修体制整備、さらには各校管理職の事務職員への人事評価を「サポート」することまで掲げられている。
 係長等はグループ内各校を巡回し、市教委の示した巡回イメージによれば、自身の本務校にいるのは月8日程度。当該校の業務遂行への支障も目に見えている。
 一方業務増では、「教育活動支援」と称した徴収金、就学奨励費、学籍転出入、教科書、調査統計…、さらには文科省が20年に発した「標準職務参考例通知」別表第二の示す、学校評価、コミュニティスクール、施設開放、保護者連絡、防災計画、危機管理マニュアル、情報公開…、といったものが挙げられている。
 川崎市教委は、「人材育成」と「効率化」のみで、今の仕事に上乗せしてこれら(にとどまらない)すべてを事務職員が担えというのだ。明らかな過重業務である。
 その上「人材育成」はグループに丸投げ、新たな業務のやり方もグループ内のOJTで身につけよという。教育委員会自身は、業務説明もマニュアル・フロー整備も行うつもりはないようだ。それでいて「業務の標準化」を謳うに及んでは、無責任もはなはだしい。
「方向性(案)」の公表に至るまでには学校事務職員もメンバーに入った検討会議が行われており、そこには川教組事務職員部元役員や事務研究会役員も参加していた。それらの職員が「方向性(案)」そのものにどこまで関与したのかは明らかではないが、このような非現実的な執行体制と業務負担についてもし賛意を示したのであれば、まず自身から範を示してもらいたい。
「モデル実施」は予定より遅れて10月から、4グループで始まる。がくろう神奈川川崎支部は「反対」の基本姿勢を堅持しつつ、定数配置の保障やハラスメント対策、係長等の職権上の限界の明示、長時間労働の予防策等、具体的な課題について協議・確認を目指していく。
 

 

理不尽な雇止めを止めよ!

「非正規」公務員の現状めぐり会見・集会

 
 がくろう神奈川からもメンバーに参加している「なくそう!官製ワーキングプア集会実行委員会」と「はむねっと(公務非正規女性全国ネットワーク)」が9月9日、それぞれ取り組んだ「非正規」公務員の労働条件にかかわる調査結果について、共同で記者会見した。 
 はむねっとの当事者アンケートは結成してから毎年継続して5回目、今年も全国の480人から回答が寄せられた。初めての回答が約6割、94%が女性だ。
 退職者のうち47%が、働く意思があったにもかかわらず雇止めされたという。23%はパワハラやセクハラが原因で自ら離職。5年、10年と長く働いている人も多く、異動してきた正規職員に業務を教えたりしている。会計年度任用制度はその在り方からして矛盾した制度。せめて民間並みの「無期雇用転換」を求めたい。 
 官製ワーキングプア集会実は、首都圏の中核市以上の106自治体に対しての情報公開を、昨年に続き今年も行った。30人以上離職者がいた場合に必要な「大量離職通知書」のハローワークへの提出は76と昨年より1.5倍に増えたものの、1か月前の期限を守らずほぼアリバイ的。再就職支援はほぼ無しで、理不尽な雇止めは正当化されている。再度の任用上限についてもまだ様子見の自治体が多く、不安定雇用は続いている。
 両調査結果は9月23日開催の「第17回 なくそう!官製ワーキングプア東京集会」でも発表。集会ではこのほか、いずれも都教委との裁判を闘うALTやスクールカウンセラーの問題が取り上げられ、「非正規」公務員に依存した学校のありようを改めて考えた。がくろう神奈川からも今年2月に取り組んだ、臨時的任用・任期付学校事務職員の雇用継続を求める川崎市庁舎前行動(本紙317号)を紹介した。
☆集会はYouTubeでも配信・「なくそう!官製ワーキングプア」で検索


 
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