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【川崎市長選挙】「川崎市で働く有期雇用職員の雇用と生活保障に関する公開質問書」と候補者の回答

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川崎市長選挙立候補予定者の皆様へ

川崎市で働く有期雇用職員の雇用と生活保障に関する公開質問書

2025年9月30日
学校事務職員労働組合神奈川川崎支部(学労川崎)
 
 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃より川崎市民の生活向上にご尽力いただいております事に、深く感謝申し上げます。
 私たちは、川崎市立学校の事務職員でつくる労働組合「学労川崎」(学校事務職員労働組合神奈川川崎支部:市人事委員会登録職員団体)と申します。学校事務職員の労働条件の維持・改善を目指すとともに、他職種も含むすべての有期雇用職員の雇用安定にも積極的に取り組んでいる労働組合です。
 
 現在、市立学校をはじめ川崎市の行政機関では、多くの有期雇用職員が働いています。その中には、無期雇用を希望しながらも有期雇用での働き方を余儀なくされている職員も多数います。そうした職員は任用(雇用)期間が終わりに近づくたび、次の雇用があるかどうか、なかった場合に生活はどうするか、雇用不安=生活不安にさいなまれています。
 民間職場では労働契約法により、有期雇用労働者の雇用期間が5年を超えた場合の無期雇用転換ルールがあります。同法は公務員について適用除外としていますが、有期雇用の広がりと固定化による雇用不安と低賃金が引き起こす、当事者の困難と社会への影響には、民間も公務も違いはありません。
 川崎市は雇用者として、行政運営や公教育の実施のために長年働いてきた人たちに、安定した雇用と生活を保障する責任があると私たちは考えます。まして、有期雇用職員の多くは「職員」であると同時に「川崎市民」でもあります。
 つきまして、以下の通りご質問いたします。何卒ご回答くださいますよう、お願い申し上げます。
 

1.臨時学校事務職員の雇用と生活の安定について

「臨時学校事務職員」は、「フルタイム勤務」かつ「任用(雇用)期間の定めのある」職員で、有期雇用ではありますが補助業務ではなく無期雇用(正規)職員と同じ業務を担う職員です。その数は今年4月時点で34人にのぼり、現に勤務する学校事務職員の15%近くを占めています。
「学校事務職員」は学校における総務・経理・庶務事務全般にあたる職員で、ほとんどの学校で1人ないし2人配置のもと、多岐にわたる業務を一手に担っています。臨時学校事務職員も同様で、配属によってはその学校にたったひとりの事務職員として、幅広くかつ重要な業務を担い川崎市の学校運営=公教育を支えています。
 そして、そうした職員の中にはもう10年・20年以上も無期雇用職員と同様に勤続し、中堅・ベテランと呼ぶべき立場にある職員が何人もいます。その蓄積された経験と発揮してきた業務遂行、そして長年学校運営に支えてきたその能力・意欲は、重ねてきた年数により充分に実証済みです。
 しかしそうした職員たちも、最長1年任期の有期雇用であるがゆえに毎年年度末には、雇用不安=生活不安にさいなまれています。
【ご質問1】
長年にわたり正規職員とまったく同じ仕事をしてきた臨時学校事務職員について、安心して働き続け生活していけるよう、無期雇用への転換を進めるお考えはありますか?
 

2.会計年度任用職員の「公募によらない再度の任用」回数上限の撤廃について

 川崎市は、非常勤を中心とする有期雇用職員「会計年度任用職員」制度において、いわゆる「公募によらない再度の任用」(※)について4回までとする上限を設けています。
 (※=勤務実績等を踏まえ公募や選考を行わず同じ人を次年度も任用すること)
 しかしこの上限は、なんら問題なく勤続してきた職員について任用回数のみを理由に「公募」のふるいにかけるものであり、当事者に雇用不安と応募手続き上の負担をもたらすとともにその誇りをも傷つけるものです。加えて、回数上限到達のみを理由として行う公募・選考・新規任用事務は、川崎市行政にも多大かつ無用な業務負担をもたらすもので、はなはだ不合理です。
 社会全体においても公務職場においても、人材確保の厳しさがますます増しています。そうした中、勤続という確かな実績をしかと認め、当事者が安心して働き続けることのできる環境を整備することは喫緊の課題です。昨年6月には国も回数上限の設定を促す姿勢を改め、近隣自治体でも上限撤廃が進んでいます。
【ご質問2】
現に働いている会計年度任用職員の雇用と生活の安定を守るとともに、公務の効率的な運営を続けるため、「公募によらない再度の任用」の回数上限を撤廃するお考えはありますか?
 
【回答要領】
回答先:(略)
締切:10月10日(金)
まことに勝手ながら、結果の集約・公表のためご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 
 また、本質問書に係る事項や、学校現場・有期雇用公務員・学校事務職員等に関係する事項について、意見交換や懇談の機会をいただける場合は、ご連絡ください。
 
 末筆ではございますが、今後ともますますのご活躍とご健勝をお祈り申し上げます。
 
【お問い合わせ先】
学校事務職員労働組合神奈川川崎支部(学労川崎)  担当:(略)
電話 (略)  Eメール (略)
 

 

各候補者からいただいたご回答

(並びは50音順)
 

くにや涼太 候補

質問1
同じ仕事をしているのであれば、同じ待遇であるべきと考えています。無期雇用への転換に向けて、何が課題となっているのか検討し、安心して働くことができる環境を整えたいと思います。
質問2
国や近隣自治体の動向も見定めながら、回数上限の見直しに向けた検討を進めるべきと考えます。その際、これまで公募とされている理由には正当性の観点もあるかと存じますので、恣意的な任用との指摘を受けないよう、勤務に問題がないということをどのように担保していくのかということも同時に検討する必要があると考えます。
 

関口実 候補

(連絡先不明のため質問書をお送りできませんでした)
 

のずえ明美 候補

質問1
・無期雇用転換を進めるべきです。民間の有期雇用の労働者の場合、5年後の更新の際に、無期雇用転換の申込権が発生しますが、臨時職員には、その権利もありません。早急に進めるべきです。
質問2
・人事院は、昨年、通知文書「期間業務職員の適切な採用について」を一部改正し、公募によらない再度の採用回数の上限を連続2回までとする取り扱い「3年目公募」を撤廃しました。川崎市では「5年目の公募」ということですが、これも含めて人事院は撤廃するという方針です。
・市は、再任用回数は4回までとし「5年目公募」は変えないという答弁でした。しかし、全国では上限回数なしで再任用する自治体が6割へ増加し、県内でも、相模原市、小田原市、厚木市、大和市、海老名市など5自治体で撤廃しています。
・会計年度任用職員、例えば図書館司書や保育士、保健師、助産師、医療従事者、学校の教職員、消費生活相談員などその地域とつながることが重要で継続性、専門性が求められる業務です。しかし、そういう方も、5年ごとに雇止めになる会計年度任用職員となっており、賃金が低い不安定雇用となっています。無期雇用転換の権利もなく、理不尽な雇止めや業務の継続性、専門性を維持できないような「公募」は、公務員の雇用形態として、制度上の問題があります。
 

福田紀彦 候補

(回答・返信をいただけませんでした)
 

宮部たつひこ 候補

質問1
無期雇用の意味について、正規職員という前提でお答えします。
法律上、正規職員への転換には通常の選考手続きが必要なものと承知しております。
また、従来は学校事務職員について正規職員の採用が30歳までだったものが、本年度から60歳前後までになったと伺っております。
これ以上の緩和については、公平性が疑われてしまう可能性があるため、現時点で判断は出来かねるというのが率直なところでございます。
質問2
私の考えは税金の使い道を正すということですので、効率化のための回数上限撤廃には賛成です。
しかし、常に自動的に再任用ということになれば、弊害も考えられるため、勤務実績が良好であるという条件は必要です。
まずは2年限定で回数上限撤廃を試行し、行政の効率向上に資する上に弊害が生じないことを確認した上で続行します。
 

山田えり 候補

質問1
臨時学校事務職員の方々が、長年にわたり学校現場を支えてこられたことに、まず心から敬意を表します。
無期転換を含む雇用安定のあり方は、制度・財源・職務体系など多くの要素が関わる非常に重要なテーマです。
現場で働く皆さんの実情を丁寧に伺いながら、実態を把握し、持続可能で納得感のある仕組みをともにつくっていきたいと考えています。
質問2
会計年度任用職員制度の運用は、現場の安定にも行政の効率にも直結する重要な課題です。
「回数上限」だけを切り取って論じることは難しく、全体の任用の実態状況を丁寧に見極める必要があります。
市としての根拠や影響を整理した上で、まずは現場の声を直接伺い、改善の余地をともに探りたいと考えています。
 

 

学労川崎のコメント

まず質問書について関口実候補に送付できなかった点、力不足をお詫びいたします。
また、ご回答をお寄せくださいましたくにや涼太候補、のずえ明美候補、宮部たつひこ候補、山田えり候補に、深く感謝申し上げます。
ご回答いただいた4候補はいずれもご質問の意図に思いを寄せていただいたうえで、濃淡はあれど改善ないし見直しのお考えを示してくださいました。国や他自治体の動向への言及や、試行といった具体的な手法への言及もあり、ご質問を通じて川崎市で働く有期雇用職員に関する課題意識を共有することができたと感じています。
一方で、現職の福田紀彦候補からは回答をいただくことができず、締切日後の10月11日に確認のご連絡を差し上げましたが今なお返信もいただけていないことは、たいへん残念です。
いずれにせよ、今回の公開質問書とそれに対する各候補者の回答が、市民の皆様の判断材料のひとつとなれば幸甚です。
そのうえで私たちは、市長選挙の結果がいかようであれ、臨時学校事務職員の無期雇用転換、会計年度任用職員の再度任用上限撤廃、ひいて川崎市における安定雇用のもとでの持続的・安定的な公共サービスの実現を目指してまいります。
(2025年10月13日 文責:書記長・伊藤拓也)
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