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学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川) web「連帯」

中教審「学校における働き方改革」答申等に対する全学労連声明

○学校現場の長時間・過重労働問題解消の願いに背を向け、給特法体制を温存するとともに1 年単位の変形労働時間制導入により問題を追認・固定化する答申に抗議する。
○膨大な欠員状況を顧みることもなく、事務職員への「校務運営への参画」「校長を補佐」などの役割論ばかりを謳い労働強化を招く答申は受け入れられない。
○「働き方改革」にこじつけた、職種内に分断・管理を生み出す「事務長」配置や事務職員を学校から引き剥がす「共同学校事務室」推進に道理はない。
 

中教審「学校における働き方改革」答申等に対する全学労連声明

 
2019年1月25日
全国学校事務労働組合連絡会議(全学労連)
議長 佐野 均
 
 本日、中央教育審議会は「学校における働き方改革特別部会」での約1 年半にわたる議論を踏まえ、「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」ならびに「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を答申・策定した。
 学校における働き方改革は教員勤務実態調査等により教員の深刻な長時間労働の実態が明るみになる中で、学校現場で常態化している長時間・過重労働問題の解消を目指すものとして当初は一定の期待もかけられてきた。しかし、中教審特別部会は学校の多忙化や長時間労働を招いた経緯や根本要因には踏み込まない表面的な議論に終始し、さらに会を追うごとに部会長ならびに一部委員を中心に、問題の解消自体に背を向ける姿勢が露わになっていった。
 特に、教員への残業代の支払いを不要とすることで長時間労働を法制度上支えている給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)については、現場から廃止や見直しを求める多くの声が挙げられてきた。特別部会でも議論にはなったものの答申では、管理強化によりもはやありもしない「勤務態様の特殊性」を持ち出し、あるいは成果は勤務時間とはむすびつかないと言い募り、あるいは給与引き下げをちらつかせたりと、現場実態や一般労働法制を侮辱した理由にもならない理由により、丸ごと温存するものとされた。
 ガイドラインにより勤務時間の上限が策定されはしたが、給特法の本来の考え方に照らせばあってはならないはずの超勤4 項目以外の残業を勤務時間として扱うという法制上の齟齬を抱えたままに、時間外労働の上限目安を月45 時間・年間360 時間とした。繰り返すが、給特法の定めにより残業代は支払われない。つまり、ガイドラインは月45 時間の不払い労働を公然と是認するものだ。さらに、特例においては月100 時間未満・年間720 時間以内まで時間外労働を認めている。ガイドラインに過ぎないため強制力はなく、違反に対する罰則規定もない。まったく不充分なものであるのみならず、本来許されない不払い労働を公然と是認する悪質なものだ。
 その上さらに、答申では1 年単位の変形労働時間制の導入まで盛り込まれた。これは授業期間中の勤務時間を延長し、時間外労働を見せかけ上圧縮しようというものだ。
 学校・教職員の抜本的な業務縮減や定数改善に対する具体策は見られない一方で、教員の「定額働かせ放題」を制度的に保証する給特法を温存し、その上1 年単位の変形労働時間制の導入を可能にすることで時間外労働を追認・固定化しようとしている。事ここに至っては、中教審は学校・教職員の長時間労働問題を解消しようとする気などさらさらないものと評価せざるを得ない。答申の本質は、長時間労働問題の解消ではなく隠蔽だ。
 本来は、「職務と勤務態様の特殊性」を理由に教員の労働者性を否認することを通じ不払い労働を是認する給特法、そして給与上の優遇措置により専門職化を進め同じく労働者性を否認する人材確保法(学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法)という、教員の労働条件を規定する両法制の是非こそ問い直されるべきである。教員にも労働者としてワークアンドペイの原則を適用し、残業代の支払いを通して残業自体をなくしていく政策を進めるべきだ。
 
 一方事務職員をめぐっては、特に副校長・教頭を中心とした教員の業務負担軽減の受け皿として位置づけられている。答申は「校務運営への参画を一層拡大することが必要」「学校運営について副校長・教頭とともに校長を補佐する役割を果たすことが期待されている」などと述べているがその内実はなく、具体的に挙げられている役割は学校徴収金や調査回答といった教育活動外業務の転嫁先でしかない。
「校務運営への参画」「副校長・教頭とともに校長を補佐」といった中身のない役割論で事務職員を業務負担増大に追い込み、教員の負担軽減を理由とした安易な業務転嫁により事務職員の労働強化を進めるものだ。
 そもそも、大仰な役割論を掲げる前に事務職員の現実を見てほしい。事務職員の配置状況は義務標準法定数に対して全国平均で3%以上が欠員とされ、特に67 ある任命権者(都道府県・政令指定都市)のうち6 団体で実に1 割以上が欠員とされている。法に定める定数が、現実には配置されていないのだ。そして文部科学省はこれに対して、なんら有効な手立てを打つことなく事実上容認してきた。法定定数も配置されていない状況をそのままに謳われる「校務運営への参画」や「校長を補佐」といった役割論は空虚だ。
 そんな欠員状況を直視しない一方で、答申は「事務職員の質の向上」「学校事務の適正化と効率的な処理」「事務機能の強化」などと称して「事務長」の配置や「共同学校事務室」推進を謳っている。そんなことより、まずは当たり前の定数配置を!と訴えたい。加えて、事務職員の間に職階・上下関係を作り出し分断・管理を生み出す事務長配置は業務上の煩雑を招くだけであり、共同学校事務室=学校事務の共同実施は事務職員を学校から引き剥がし外部化するものだ。校務運営への参画を謳う一方で学校にいる事務職員というあり方を破壊するものであり、答申全体の方向性とも矛盾する牽強付会のこじつけだ。
 さらに答申は、就学援助定数による事務職員についてスクールソーシャルワーカー(SSW)に準じた業務を担わせることも盛り込んだ。これは特別部会の議論ではまったく登場していなかった内容である。福岡市による事務職員定数を「活用」=流用したSSW 配置が念頭にあるのは間違いないだろうが、答申はこれを肯定したということだ。他方で事務職員を「総務・財務等に通じる専門職」、SSWを「教師とは異なる専門性」などと言いながら、そうした位置づけとは無縁の定数付け回しだ。中身のない「期待」が語られる一方で、事務職員の定数崩しにつながる方策を公然と打ち出している。
 
 私たち全学労連は、学校現場の長時間・過重労働の問題解消に背を向け、事務職員の労働強化と職の不安定化を招く答申に対して抗議する。今後の政策化に反対し取り組んでいく。
 
以上
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