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学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川) web「連帯」

「連帯」No.295(2020年11月16日)

GIGAスクール構想と一体で狙われる

児童生徒の個人情報や教育ビッグデータ

 

公教育のビジネス化・市場開放の露払い

 政府の進める「GIGAスクール構想」が、学校現場にやってこようとしている。
 GIGAスクール構想は2019年度政府補正予算で予算化されたもので、小中学校での「児童生徒1人1台コンピュータ」「誰一人取り残すことのない、個別最適化された学びの実現」を掲げ、ハード・ソフト・指導体制面を整備する教育改革施策だ。当初、「1人1台」は23年度完了の予定であったが、新型コロナ感染症の拡大を受け編成された20年度補正予算(20年4月)において、「学校休業時における子供たちの『学びの保障』」と銘打って実に2292億円が計上され、計画を前倒しして今年度中に全員分の端末を配備することとなった。
 ただ、GIGAスクール構想の源をたどると、単なる教育施策、教育改革以上の「国策」としての面が明らかになる。
 構想の大元は「世界への貢献と課題克服」「我が国の産業競争力の向上」を目指す政策パッケージ「AI戦略2019 ~人・産業・地域・政府全てにAI~」である。これを受け文科省は20年度予算概算要求(19年8月)で、「GIGAスクールネットワーク構想」375億円を計上した。
 しかしその後、経済財政諮問会議で安倍前総理が「パソコンが1人当たり1台となることが当然だということを、やはり国家意思として明確に示すことが重要」と発言し、「1人1台」ありきで構想は加速。12月の「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」閣議決定に「GIGAスクール構想の実現」が盛り込まれ、同月の19年度補正予算案で2318億円もの額が計上されるに及んだ。
 同12月に文科省が公表した「GIGAスクール構想の実現パッケージ」では、内閣官房と総務省、経済産業省の事業との関連が示され、新たな通信システムの活用実証や教育産業をはじめとする民間企業サービスの積極的な学校導入、児童生徒のビッグデータ収集等が盛り込まれている。特に経産省の事業資料には「国内外の民間教育と学校と産業界によるオープン・イノベーションをベースに、教育の姿を変える」「産業界の教育参画と民間教育事業者との協業による学びの高度化」といった文言が躍り、GIGAスクール構想はこうした事業を進めるための環境整備として想定されている。
 学校現場からの要求とはまったく無関係に持ち込まれたGIGAスクール構想は、教育政策というよりは社会構造改革や産業経済政策のパッケージというのが実態だ。その先には経済・産業政策に奉仕する、公教育のビジネス化・市場開放の促進が狙われている。
 

事務職員は手先になってはならない

 GIGAスクール構想のそうしたあり方は、21年度予算概算要求で一層進行している。端末や通信環境整備にとどまらず、オンライン学習システムの全国展開や教育データの利活用を掲げ、さらに「学校健康診断情報のPHRへの活用に関する調査研究」なるものも、「学校における感染症対策の充実」の名のもと盛り込まれている。「PHR」とは個人の医療・健康情報を収集し一元保存する仕組みであるが、これはマイナンバーに紐付けして活用することが想定されているものだ。
事ここに及んでは、GIGAスクール構想、学校のICT化を単なる教育活動の改善策と見ることはできない。児童生徒ひとりひとりの学習・健康・身体といった個人情報を収集すると共にそれをビッグデータとして都合よく使っていくこと、利潤追求の教育を進めること、社会のデジタル化を否応なしに進めていくことを主眼とし、公立学校をそうした場としていくものだ。
 学校教育にICTを活用することそのものを否定はしない。しかし、児童生徒を個として尊重しその人格を伸ばすべき学校が、児童生徒=市民の個人情報の国家一元管理化やビッグデータ化の片棒を担ぐようなことは、絶対にあってはならないはずだ。
 折しも、文科省が発した事務職員の標準職務参考例通知では「ICTの活用支援」が「積極的に参画する」職務に盛り込まれている。しかしその意味とは、これまで述べてきたように、公教育の市場への売り渡しや個人情報の国家一元管理化への「参画」なのではないか。
 私たち学校事務職員は、そのような国策の手先になってはならない。
 

 

有期雇用や短時間勤務労働者への不当な待遇格差解消を! 

 
 10月13日と15日に、旧労働契約法20条に関する5件の最高裁判決が出された。同条は有期雇用労働者について、無期雇用労働者との不合理な格差を禁止するもので、今年4月からはパートタイム・有期雇用労働法に同様の条項が定められている。裁判はこの定めを踏まえ、有期雇用労働者が「賞与・退職金の支給がないこと、手当・休暇に待遇差があることは同法違反」として訴えたものだ。
 13日の判決は、「正規労働者と非正規労働者の職務内容や人事異動に違いがあることから、非正規労働者に賞与・退職金を一切支給しなかったとしても不合理とはいえない」として、一部を「支給すべき」とした高裁判決を覆した。一方15日の判決は「扶養手当など5つの待遇差は不合理」とする、ほぼ労働者勝利の判決であった。
 労働契約法20条は、2012年の労働契約法改正により雇止め制限・無期転換権とともに生まれた。非正規雇用労働者が不安定な雇用条件から処遇改善を訴えにくい立場に置かれ、労使関係が極端に使用者有利となっている状況を改善するためのものだ。このことは18年6月の最高裁判決で、同法20条は「職務内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定」と確認されている。これを踏まえると、15日の手当・休暇の是正を命じた判決は妥当としても、13日に示された賞与・退職金なしを是認する判決は、実態を見ないものであり不当と言わざるを得ない。労契法20条があっても不当な格差は埋まらず、それどころか格差を一部是認した最高裁判決は時代に逆行している。
 ひるがえって学校現場を見てみよう。やはり非正規雇用(任用)労働者は増加している。会計年度任用職員制度導入時には多くの自治体で、期末手当(のみ)が支給されるようになることを理由に給料月額の引下げが行われた。そこに今年進行している期末手当引下げは、会計年度任用職員に一層の打撃を与える。仮に今後も、ボーナスがアップする時は勤勉手当、ダウンする時は期末手当ということであれば、ますます格差が増大する。
 私たちはすべての労働者が安心して働ける社会を作るため、こうした格差を放置せずなくしていくため、労働組合として声を挙げていきたい。
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