中教審「質の高い教師の確保特別部会」審議のまとめ
それは学校事務職員に何をもたらすか
中教審(中央教育審議会)「質の高い教師の確保特別部会」は5/13、「審議のまとめ」を盛山文部科学大臣に提出しました。
「まとめ」は、働き方改革の加速化、学校の指導・運営体制の充実、教員の処遇改善を一体的・総合的に推進する必要があると提言。働き方改革では「教師が教師でなければできないことに集中できるようにする」と打ち出し、2019年の「働き方改革」中教審答申で示された「学校・教師が担う業務に係る3分類」を基にした業務適正化徹底が謳われています。処遇改善では、教員には時間外勤務手当を支給しない「給特法」の枠組みを堅持しつつ、現行一律4%である「教職調整額」を10%以上に引上げることを盛り込みました。また、教諭と主幹教諭(神奈川でいう総括教諭)の間に新たな級(主任教諭)を創設し6級制を実現するとしています。
大臣はこれを受け「必要な法律改正や予算要求に向けた検討に全力で取り組んでいく」と表明しました。
「まとめ」に対しては、がくろう神奈川も参加する学校事務労組の全国組織「全学労連」のニュース456号(24.5.25)に、3人のメンバーによるそれぞれの視点からの分析を掲載しています。全学労連HPに掲載されているので、ぜひご覧ください。(「全学労連」で検索)
その上でここでは、「まとめ」のうち学校事務職員に言及した点に絞って、その問題点を挙げていきます。
事務職員へのさらなる業務押し付け
事務職員をめぐっては、「学校のマネジメント体制の充実」の文脈の中に言及がなされています。
そこでは「総務・財務事務の効率化に取り組むことはもとより、教師等との適切な連携・分担の下、その専門性を生かして、より主体的・積極的に校務運営に参画することが求められ」るとあります。
しかし、今まさに担っている総務・財務事務に対しては、効率化云々よりまず「適切・円滑に遂行をする」ことが第一ではないのでしょうか。まして、地方自治法や地方公務員法の改正等により、「総務・財務事務」の複雑さと業務負担はこれまでより増しています。そうした実態に目を向けることなくいきなり「効率化」を言ってしまう時点で、事務職員の現実の仕事についてまともに考慮していないことが透けて見えます。
そのうえで「教師等との適切な連携・分担の下(中略)校務運営に参画すること」が求められる、と続きます。これは「教師が教師でなければできないことに集中できるように」という目標のもとでは、「教員が担ってきた業務の事務職員への押し付け」を意味することは明らかです。もとより「学校における働き方改革」もそうしたものではありましたが、それでも「学校における」という建前上、事務職員の負担にも配慮するポーズはありました。しかし今回は「質の高い教師の確保」。事務職員への業務転嫁はよりむき出しになります。
それを表しているのが「3分類に基づく14の取組の実効性を確保するための各主体による『対応策の例』」なる「別紙」です。先述したように「働き方改革」以来の「学校・教師が担う業務に係る3分類」を基にしたもので、ここで「学校徴収金の徴収・管理」や「調査・統計等への回答等」を事務職員に押し付けることが「対応策」として改めて打ち出されています。
特に徴収金では、本来の方向性である「行政が担う」旨よりも事務職員に押し付ける方向の記述が目立ちます。そしてそれを正当化しているのが、20年に文科省が発した「標準職務」参考例通知です。日教組・全事研は「職務確立」「経営参画」などと称して評価・歓迎した通知ですが、案の定事務職員の業務負担増を生み出すものとなっており、つくづく罪深いものです。
共同学校事務室で定数改善は望めない
そんな事務職員の業務負担増の受け皿とされるのは、今回も共同学校事務室です。
「まとめ」は「共同学校事務室の設置促進を図る観点から、共同学校事務室には原則として加配を行う」、そして「その配置充実の状況等も踏まえつつ、複数配置基準の引き下げを検討する」としています。
共同学校事務室を進めれば事務職員の定数改善が進むかのようですが、だまされてはいけません。配置基準の改善は15年の「チーム学校」中教審答申でも、共同実施の法制化=共同学校事務室とともに盛り込まれていましたが、共同学校事務室とは対照的に配置基準改善は話題にもならず雲散霧消しました。そんな経過を振り返れば、事務職員の定数改善が「質の高い教師の確保」の「ついで」で実現するとは思えません。
そして何より、共同学校事務室はそれ自体が、「成果」を求めるあまり事務職員による一層の業務引き受け=業務増を招く装置です。共同実施・共同学校事務室が事務職員の業務負担増を招いていることについては、文科省でさえ「そういった認識は持っている」と表明しています。自身の労働条件・労働環境を大切にする事務職員にとって、共同学校事務室は百害あって一利なしなのです。
このかん給特法見直しを訴えていた日教組でしたが、「まとめ」を受け「処遇改善は実現してほしい」と早々に腰砕けになりました。事務職員への業務押し付けについても、県内の日教組傘下組合事務職員部はむしろ率先して「業務取り込み」を進めてきました。過重業務に反対し事務職員が安心して働ける環境を守れるのはがくろう神奈川だけ。業務負担増に反対しましょう。
時間年休は40時間まで 子の看護休暇は小3まで
県内最悪の休暇制度改善を求め
川崎支部が人事委員会に措置要求
川崎市の学校事務職員は2016年度まで、県費負担職員として県の休暇制度が適用され、時間年休の取得に制限はなく、子の看護休暇は中学3年まで取得できました。しかし17年の市費移管に際し、時間年休は40時間まで、子の看護休暇は小学3年までと、大きく悪化させられました。がくろう神奈川川崎支部は県と同水準の休暇制度確保を求めましたが、川教組はこうした悪化も含め「大綱合意」し、改悪が強行されました。
さらに22年、時間年休の40時間制限について、教員と学校栄養職員についてのみ撤廃することを当局と川教組が合意。学校事務職員の休暇制度改善は、川教組からは切り捨てられてしまいました。
がくろう神奈川川崎支部はこれまで、両休暇制度の改善(権利復元)を求めて要求・交渉を続けてきましたが、7年間の平行線を踏まえこのほど、「時間年休制限の撤廃」「子の看護休暇を中3までに」の2点について、人事委員会への措置要求に踏み切りました。
いずれの改善も、利益となる職員がいる一方で不利益を被る職員はありません。旧県費負担教職員にとっては、当局と川教組によって後退させられた休暇制度上の権利を取り戻す取り組みでもあります。がくろう神奈川はあらゆる手段を講じて、労働条件改善の実現に本気で取り組みます。
労働法制改悪に警戒を! 県共闘学習会へご参加ください
今年1月、厚生労働省は労働基準関係法制研究会(以下「研究会」)を発足させ、5月までに7回の会合がもたれています。「研究会」設置目的は、 ①昨年10月に公表された「新しい時代の働き方に関する研究会報告書」(以下「報告」)を踏まえた労働基準法制の法的論点整理 と ②働き方改革関連法の施行状況を踏まえた労基法等の検討 です。
労働法制をめぐっては規制緩和を求める使用者側と監督強化・規制強化を求める労働側で大きく意見が異なっています。労基法改正に結び付く「研究会」の動きは大変危険なもと言わざるを得ません。
「報告」は9人の委員によってまとめられ、「研究会」委員は10人ですが、どちらも労働者代表委員はいません。そして「報告」の内容で危険なのが、36協定のような労使合意を前提とした法令適用除外を拡大する発想が見えることです。更に「労使コミュニケーション」という言葉を使い、1対1の労使関係での合意が有効となる考え方も見て取れます。
前者は労基法の骨抜き、後者は団結権・労働組合破壊につながります。「研究会」の結論はまだ出ていませんが充分に警戒していく必要があります。
がくろう神奈川も参加する「神奈川県労働組合共闘会議」は、労働法制改悪阻止の学習会を以下の通り開催します。学習会では、政府・財界が狙う労働法制改悪の動きや「研究会」の経過等も話されます。皆さんもぜひご参加ください。
〇日時:7月4日(木)18:30~
〇場所:横浜市技能文化会館603号室
〇講師:嶋﨑量弁護士(日本労働弁護団常任幹事)